全国47都道府県の図書館発司書が選ぶ新しい文学賞をつくる
約二万店あった書店の数はこの30年で半減し、今なお減り続けています。統計を取ったのは少し前のことなので、現在では九千件を割っているかもしれません。その内、教科書販売のみを行っている書店を除けば、八千件を下回っているとも言われています。
また現在、書店が一店舗も存在しない市町村は約25%にまでなりました。これには様々な要因がありますが、出版業界の中では、常に図書館の影響も大きいなどと語られてきました。図書館が同じ本を複数購入することで、販売機会を失っていると主張する複本問題などが代表的な例です。また廉価版である文庫本は図書館に入れないように、出版業界から要請があったこともありました。つまり書店と図書館の間には、けして確執が無かった訳ではないのです。
そのような中、文部科学省主導で令和五年から四度にわたって行われた「書店・図書館等関係者における対話の場」に、私も書店側の一人として参加させて頂きました。
互いの主張がぶつかって一時は紛糾するも、一歩を踏み出す切っ掛けになったとは思います。
しかしながら、現在の出版業界の取り巻く状況を鑑みれば、対話だけで満足している訳にはいきません。ゆっくりと構えている時はもう残されていないのです。
出版業界の衰退は、必ずしや図書館業界にも波及します。私は鎖で繋がれた二艘の船のように思っています。さらに連携を進めねばならないと感じました。誰かがやってくれれば……残念ながらそれを待つ猶予さえもう無いと感じ、図書館業界の様々な人、企業に積極的に訪問、取材、また協力を要請してきました。
大きな視野で図書館と書店の連携を進められないか。作家と地域の結びつきを強くし、各地での文化振興の一助にならないか。さらに作家にとってもステップアップの場にならないか――。
そうして考えたのが、この『本の甲子園』です。図書館業界、出版業界がここまでスクラムを組むのは史上初となります。この新しい取り組みが、本を愛する全ての人、本の未来を守る力になると信じて邁進して参ります。
